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RACOON NEWS

2022.01.25

【開発秘話】ドライパスチャライザー HMP-4

「母乳を殺菌できないか」

千種康一(弊社代表取締役)が、2014年に小児科の学会を聴講し感じた課題でした。

“サイトメガロウィルスといってもピンときませんが、ヘルペスと言えばどなたも御存じですし、幼児期や成人が保有するウィルスで体調不良時に発症するものです。ところが体重が1kgにも満たない早産未熟児には失明、難聴、死に至る大変な感染症なのです。その感染源が母乳であることが多いのです。早産未熟児であれば母乳が命の綱です。投薬で人間は生きることは出来ません。従って小児科医はサイトメガロウィルスのリスクを可能な限り避けながらも母乳を投与せざると得ないのです。仮に母乳からサイトメガロウィルスに感染した場合、早産未熟児のダメージは相当なものです。また、そのお母さんはもっとダメージを受けられることになります。その為に免疫成分、栄養を可能な限り残し「母乳を殺菌する」装置を開発しようと思っています。”

ー2014.11.11 千種康一 Facebookの投稿よりー

この社会課題を解決するため、三田理化工業では、従来の海外で用いられている温水を用いた「湿式」と呼ばれる母乳殺菌機ではなく、水を使わずに熱を加える「乾式」母乳殺菌機の開発に着手しました。これは、院内の感染防止に取り組まれている病院でもお使い頂くことを目指したためです。

ものづくり補助金を活用し、2015年には試作1号が完成して展示会に出展することが出来、開発は順調に見えましたが、ここからが苦難の始まりでした。

試作1号

試作1号

この開発では、弊社のディスポ哺乳瓶に外から熱を加えることで、液体に「62.5-65℃ を 30分」の殺菌時間を確保する必要があります。しかしながら、プラスチックであるディスポ哺乳瓶を通してこの温度管理を実現するのは非常に難しく、何百もの試作、検証を繰り返さなければなりませんでした。

この間に一般社団法人 日本母乳バンク協会が設立され(2017年)、関係者のご尽力により母乳を提供する取組みが徐々に広がり、この低温殺菌のニーズが高まっていきました。※弊社もこの想いに共感し、支援させていただいております。

一般社団法人 日本母乳バンク協会

ようやく2021年に医療機器としての必要な仕様をまとめ、乾式低温殺菌装置「ドライパスチャライザー HMP-4」として届け出ることができました。開発に着手してから7年が経過していました。

ドライパスチャライザーの製品ページ

開発中、無理だ、諦めようという声が社内で何度も出ましたが、それでも開発を続けたのは、経営理念である「創造力と技術革新により、顧客の課題を解決し社会に貢献する」を実現するという想いです。この理念実現のため、開発チームは諦めずに挑戦し続けました。
三田理化工業はこれからも、道なきところに道をつくり、進み続けます。

最後に、この製品を開発するきっかけとなった学会に参加した当時の、弊社代表取締役の想いを共有させていただきます。

“学会では障害児の赤ちゃんポスト問題や、障害児や病児への両親の治療拒否等難しいテーマも発表されています。命の有り難さと身に染みて感じます。命を繋いできたこれまでの全ての人類の母に感謝したいと思います。わが母にも命を頂いたことに感謝します。”

ー2014.11.11 千種康一 Facebookの投稿よりー